女性特有症状の原因-即効性を目指す鍼灸

よくみられる原因として(T)寒・湿の邪(U)正しくない生活習慣(V)精神面(X)五臓六腑の状態(Y)気血失調、などが考えられます。実際には、これらが相互に影響し合いながら発症させます。例えば『湿気の多い時期(湿邪)に冷飲をし(生活習慣)、仕事や家庭のことで思案することが多く(精神面)、脾を損ない(五臓六腑)、気虚になり(気血失調)、女性特有の症状が酷くなった』などです。

(T)寒・湿の邪
寒・湿の邪は人体の正常な営みを乱しますから、大きな原因のひとつです。邪があっても発症する人としない人がいます。これは邪(原因)の大きさとご本人の生命力(正気)が闘ってどちらが勝つか・・・によって分かれます。

ア 発症しない場合:邪(原因)×生命力(正気)→生命力(正気)の勝ち

イ 発症する場合:邪(原因)×生命力(正気)→邪(原因)の勝ち・・・というわけです。
つまり、邪(原因)が強くても、生命力(正気)がそれ以上に強ければ発症しません。逆に邪(原因)は強くなくても生命力(正気)が弱っていれば、発症します。そして、生命力(正気)を強くするためには生活習慣の改善(足を使った運動・少なめで質素な飲食・早寝)が欠かせません。

@寒邪
気血がうまく巡らなくなり、身体を温める機能を失調させます。寒によりかたまると、気血のスムーズな流れを阻害しますから、月経血もスムーズに流れ出なくなり、それが出るときに痛みを伴います。寒邪には外因の邪と内因の邪があります。外因の邪とは外から入ってきた邪です。夏の冷房や冬の寒さなどです。内因の邪とは、元々冷え性であったり、冷飲食により体内に寒が発生し、原因となります。基本3タイプでいえば、冷え性タイプがこれに該当しますが、胃腸タイプとダブっている人も多くみられます。症状としては、顔面蒼白・風や寒さを極端に嫌う・下腹部が冷えて痛む・腰が重くだるい・膝が痛い・手足が冷たい・舌が痩せている・舌に白い苔が付いている・・・などが特徴です。寒性の変調(元々の陽虚体質=冷え性、外部からの寒邪の侵入)→血の滞り→「ちょうか」と変化すると子宮内膜症や筋腫などになります。

A湿邪
日本は湿度が高いですから、湿邪にやられる人は多くみられます。6月〜8月(特に7月)に体調を壊す人が多いのも、湿邪の影響によります。実際には、湿邪(湿度↑)+寒邪(冷房・冷飲食)により発症する例も多くみられます。湿邪は粘ってべったりとしていますから重く沈み、気血がスムーズに流れなくなります。湿邪は気血だけでなく、脾胃の損傷や温める機能にも悪影響を及ぼし、軟便やむくみなどにも影響します。日本は湿度が高いですから湿邪も多く、疲れやすい・頭が重い・胃が弱い・舌に白い苔がある・舌の両側に歯型がついている、などの症状もみられます。湿により脾胃が弱くなると、水のはけが悪くなり、不必要な湿が体内にたまりやすくなります。この不必要な湿がヘソから下に影響すると、おりものが多い・周期が伸びる・水ぶくれ・不正出血などもみられます。肥満の方は脾気の失調により水のはけが悪くなり、痰湿を形成しやすくなっています。基本4タイプでいえば、胃腸タイプがこれに該当しますが、冷え性タイプと重なっている人も多くみられます。水分を体内に振り分ける過程でうまく行かず、月経のときに子宮や卵巣周辺に溜まる→それが慢性化→子宮内膜症・筋腫などの「ちょうか」となります。

(U)正しくない生活習慣

@飲食
食べすぎ・飲みすぎ・甘いもの・野菜不足・肉食・アルコール・コーヒーお茶類の過飲・冷飲などは脾胃を損ないます。「何を食べたら良いか?」という発想よりも「悪いもの・不自然なものを食べないようする」のが飽食時代の健康法です。しかし、過度なダイエットなども気血を生成できなくなりますから、悪影響なことはいうまでもありません。

A運動不足(足を使う運動)
睡眠不足や栄養失調が身体に悪いように、運動不足が身体に悪いことは明白です。

Bストレス
これは、ほとんどすべての人において避けて通れません。ストレスは五臓六腑でいえば「肝」の疎泄を損ないますから、(足の)筋肉(参考:五行色体表)を使う運動を行って発散するのが王道です。飲食などで発散しようとすると、その時は良いのですが、脾胃に負担がかかり益々ストレスをためやすい体質にしてしまいます。その場限りの安易なストレス発散はできる限り控えましょう。

C遅寝・睡眠不足
身体のメンテナンスをする時間帯は夜10時〜午前3時頃です。この時間帯に寝ていないと充電ができません。表面的には疲れがとれていても、奥深くの自分自身で気づかない部分の疲れはとれません。このことは、鍼灸などの伝統医学では何千年も前から伝わっており常識とされてきましたが、最近はホルモンの分泌などから科学的にも証明されつつあるようです。

(V)精神面
五行色体表をご覧ください。五志に「怒・喜・思・憂・恐」とあります。これらの過度な亢進や減退は、五臓に影響を及ぼします。急激な精神面の変動は自覚がありますが、長い間かけて徐々に蝕まれていった場合は、精神面が原因であるという自覚がありません。しかし、精神面を無理に精神力で向上させようとしても無理ですから、生活習慣を正しくし、何かあったときにも生命力の減退を最小限に食い止めることが肝要です。

(W)五臓六腑の状態
五臓には肝・心・脾・肺・腎があります。これが直接の原因で女性特有の症状は発症します。今まで述べてきた(T)寒・湿の邪(U)生活の悪習慣(V)精神面が五臓六腑を侵すことにより、発症するのです。

@脾:胃腸 型
脾は、胃腸で消化吸収した栄養分をさらに身体の隅々まで行き渡らせる役目を負っています。脾は気血を生成し、エネルギーに変えます。脾が健康であれば栄養状態もよく、エネルギーも充満された状態になります。脾虚弱になると、消化吸収、水分などの新陳代謝、気血の造成、血を止める作用などに悪影響がでます。また、手足がだるくなったり、口や唇、歯茎、肌肉などに異常が現れることがあります。

(ア)脾虚により空虚になる
脾虚になるとパイプの中を通っている気血を流す力が衰え、気血の流れが渋ります。その結果が血にも及び、渋る痛みが現れます。

(イ)湿がたまる
パイプがつまりますから、不要なもの(湿痰)が体内にたまります。その結果、デキモノや血の塊(ちょうか)となります。湿度が高い時期(特に7〜8月は冷房・冷飲食とのダブルパンチ)に調子を崩す人は、この傾向が強いといえます。

(ウ)脾の統血機能が衰える
脾虚のために血が製造できず、薄くなるとダラダラ長引くなどの症状があらわれます。統血機能とは、必要なときに出して、不必要なときに止める機能です。

A肝:イライラ型
「肝は疎泄を主る」といわれています。「疎泄」とは二つの意味があり、一つはすみずみまで行き渡らせるという意味で、もう一つは円滑でよどみないという意味です。つまり、肝には気や血の流れを円滑で伸びやかにする働きがあることをいいます。肝気が伸びやかであれば、気も順調にめぐり、精神も伸びやかで葛藤もありません。疎泄の働きが悪くなると、気が滞り、精神抑うつ、イライラして怒りっぽいなどの症状を呈します。

(ア)肝うつ気滞(特にイライラ型
肝は春の木のように、外に向かって伸びやかに振舞いたい性質があります。しかし、仕事や人間関係などのストレスはそれを頭から押さえつけようとします。伸びたいのに伸びることができず、欲求不満状態になると、身体全体が悶々とします。全体が悶々とすると女性特有の症状に関連する場所もすべて同様の状態となります。そうなると、パイプの中を伝わって出て来ようとしている気血の通り道が締め付けられ、出てくることができません。「詰まる」ということです。この詰まった状態から無理にでも出ようとしますから、その時に痛みが発生します。

(イ)肝心上亢(イライラ型
これは(ア)+火のことです。(ア)が長引くと火を発生します。火は炎上しますから、肝気が上亢して心に及びます。そうなると熱が発生して月経に関連する部位を侵し、女性特有の症状が発生します。つまり、疎泄が悪くなったために、詰まりすぎて気が上がった状態になり、胸がドキドキしたり呼吸がハァハァする状態になります。(ア)の悪化した状態と考えてください。

B腎:
腎は先天の精といって生まれつきもっている「元気」のことです。 腎精の働きのうち、基礎活力をもたらす「元気」と、子孫を残す大切な働きの「生殖」があります。腎は五臓六腑すべての土台であり、植物でいえば根に該当します。つまり、最も重要な臓であり、いわば生命力・成長力・生殖力の根源です。腎が正常であれば、基礎活力が盛んで活動的、病気をしにくい、などの特徴があります。
五行色体表をご覧になると分かりますが、骨・髄・精志など人間の根幹に関わる場所は腎に属しています。腎にも陰と陽の考え方があり、それらが不足すると女性特有の症状が発症します。

(ア)腎陰虚エンジンオイル枯渇タイプ
陰はいわゆる津液であり、エネルギーを含んだ全身の水分です。お腹を壊すとゲッソリとするのは、便といっしょにエネルギーを含んだ津液が漏出してしまうからです。お腹を壊すこと以外にも、性交過多・精神的因子(恐)は腎陰を損ないます。腎陰は生殖能力のある身体をつくります。腎陰虚になるとエンジンに対して潤滑油を補給できなくなるため、潤い不足となり、エンジンが円滑に作動できなくなります。

(イ)腎陽虚冷え性 型
腎陽とは腎中の陽気であり、温める機能です。腎陽虚になると生殖器を温めることができず、パイプが冷えでかたまり、気血がスムーズに流れなくなり、生理トラブルが生じます。随伴症として性欲低下・お腹を壊す・軟便などがあります。

(Y)気血失調
気と血は相互に影響を与え、相互に依存しあっています。具体的な症状により、気血のどちらが主体になるかによって、原因が「血分にある」「気分にある」などといいます。血分にあるのは、血虚・血熱・血寒などがあり、気分にあるのは、気虚・気陥・気うつ・気逆などです。
婦人症状は血と関係が深く、たとえ正常な月経であっても、つねに陰血を損傷するので、女性はつねに陰血不足の状態にあり、相対的に気が有余の状態にあります。

@血虚エンジンオイル枯渇タイプ
血虚になる原因は非常に多くあります。(ア)虚弱体質や慢性症状により精血が不足したり、(イ)脾胃で気血を生成できないために血虚になります。
血虚になると血が希薄になって粘度が下がり、そのために血が急速に流れて余計な漏出をもたらし、ますます血虚に拍車がかかります。

A血お
血の停滞または、正当なエネルギーの通り道から外れた所に位置する血です。気が滞ることに伴う血の停滞、温める機能の衰退によるかたまりの形成や送り出す力の減退・熱が煮詰めることによる粘滞、などが原因となります。
 生殖器関連場所にたまる血塊も血おで、それがある限りなかなかスムーズに生理を迎えることができません。塊(かたまり)を排出するのもこのことと深く関わっています。塊(かたまり)があれば、血をスムーズに排出することはできず、子宮内膜症や筋腫などを引き起こします。

B血寒
身体を温める機能が衰退していたり、冷飲食・冷房などにより寒が生まれます。寒が血を寒凝させて血がスムーズに流れなくなりますから、詰まりが生じ、女性特有の症状などを引き起こします。

C気虚胃腸 型
気虚とは身体や臓腑機能の衰弱です。よくみられるのは、脾気虚や腎気虚です。虚弱体質や慢性症状・過労などが気虚の原因となります。

D気うつ気滞
肝は気を巡らせます。気うつとは気のめぐりがスムーズでないことをいいます。肝は精神面と関係が深く、肝気がうっ結すると、抑うつした精神状態になり、イライラしてすぐに怒ったりします。これらは相互に原因になったり結果になったりします。気がうっ滞すると血行も悪くなり、気滞型の痛みを引き起こします。血が出るときにはスムーズに流れないのが原因です。

E気逆
ひどく怒ると気がうっ滞し逆流して上昇し、肺・心を侵すため、イライラ・不眠・頭が重い痛いなどの症状が発症します。気が上に偏ると、下焦が虚になるため、血がスムーズに流れずに発症します。

(まとめ)
月経異常を良くするためには治療も大切ですが、生活習慣を改善することが急務です。生活を正せない理由を探すのは簡単ですが、できる理由を探してコツコツと取り組みましょう。そのことが、月経トラブルのみではなく、様々な症状の軽減・根絶に直結します。自分自身を節制して、生活の質(QOL)の向上に努めましょう。

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