夏の絶不調のカラクリ

なぜ、夏には体調を崩すのでしょうか?色々な原因が取りざたされていますので、いくつか挙げてみましょう。
・最近の夏の暑さは異常だから
・冷たい飲食のしすぎ
・冷房の当たりすぎ
・寝冷え
・脱水
・湿度が高い etc

どれも当たっていると思います。しかし、本当にこれだけでしょうか?"夏に少し体調を崩す"程度の方なら、それで納得するかもしれません。しかし、"地獄"に陥っている最中の人は、絶対に納得しません。どんな地獄に陥っているのか、思いつくことを挙げてみましょう。
・月経が来ない
・毎日、下痢・軟便
・1日中、胃がムカムカする(波がある)
・1日中、下腹部がシクシクする(波がある)
・慢性的な睡眠不足
・腰痛
・動悸
・生理痛がものすごい
・ヒステリーで人間関係がうまくいかない
・叫び出したくなる
・膀胱の異常
・元々の症状が悪化する(特に気が突き上げる症状は最悪) etc

まさに”生きているのがイヤだ”と思うほどの地獄を味わっている人もいるでしょう。これだけの地獄をもたらす最大の原因は”心の異常亢進”です。五行色体表をご覧下さい。火の欄を下に見ていくと、"夏""心"になっています。つまり、夏は"心"を中心に五臓六腑が働くわけです。そのため、五臓六腑が丈夫な人の特徴としては
・活動的になる
・暴飲暴食をしても大丈夫
・疲れにくい etcなどが挙げられます。

どうして、夏特有の現象がみられるのでしょうか?その答えは、五臓六腑のエネルギーのバランスにあります。

上焦:肺・心
中焦:脾(胃)
下焦:肝・腎(小腸・大腸・膀胱・生殖器など含む)



この図を家に例えてみると、

上焦:屋根などの上部を形作る
中焦:壁などの中間体を形作る
下焦:土台を形作る        となります。

夏は心が旺気するため、上焦が大きく重くなります。つまり、重くなりすぎた上焦により、中・下焦が押しつぶされるわけです。

その結果、様々な不調がもたらされます。特に、昨今の暑さは異常です。私が子供の頃は、真夏の暑さといっても、せいぜい30℃代前半でした。朝夕は涼しくなり、エアコンはなくても過ごせました。昨今は40℃近くまで上がってしまうため、心もより激しく異常亢進するため、暑ければ暑いほど、図Aの傾向が一層強くなり、体調を崩します。ちなみに、冬に体調を崩すのは、バランスは良いのですが、下焦(腎)が旺気するため、下焦に負担がかかります。下焦に力がない人の場合、その負担に耐えられずに体調を崩します。

このような現象は、発表会などで自分が責任ある役目を負っているときなどに、心臓がドキドキし、便が緩くなるのに似ています。また、興味ある事柄などを時間を忘れて調べているときに、便が緩くなるのも同じです。つまり、興奮すると心が旺気するので、「上(胸)が重くなり、下(ヘソ下)が押しつぶされ、弱くなる」ということです。

心が異常亢進して、中・下焦の内臓が押しつぶされる現象は、夏に最も起こりやすいのですが、コーヒー・お茶・タバコ・精神的緊張などにより、軽い心の異常亢進は日常的に起きています。逆にいえば、コーヒー・お茶・タバコ・精神的緊張などは心を異常亢進させた時の、高ぶった気持ち良さを味わいたくて摂取しているわけです。コーヒー・お茶・タバコ・精神的緊張により、上焦が重くなり下焦が圧迫されるため、便通がよくなる人もいます。"コーヒー・お茶などには〇〇という成分が入っているから良い"などと言いますが、非常に単純な発想です。入っている物質だけ見るのではなく、神経興奮作用なども考えて、体に及ぼす影響の全体を考えなければ、本来の作用は見えてきません。

もう一つの夏の不調の原因は、水分を制御できないことです。これは腎陽虚(冷え性タイプ)や痰湿証(水分代謝低下)の人にみられます。五行色体表にあるとおり、水を制御するのは腎であり、体中に水分をいきわたらせるのは脾です。夏はノドが乾きますから、他の季節よりも水分を多く摂取する必要があります。腎陽虚(冷え性タイプ)や痰湿証(水分代謝低下)の人は、"摂取した水分を必要な方に回して、不必要な方には回さない"とする働きが弱いのです。そのため、”おしっこは夏だけ色がつくのに(必要な方に回らない)、身体に不必要な水分は溜まる(不必要な方に回ってしまう)”といった現象がみられます。こうした現象も、暑ければ暑いほど悪化します。

以上の説明のとおり、昨今の夏の状況は非常にタチが悪くなっています。"何をやっても裏目に出てしまう"ということにもなりかねません。「こんなに気をつけているのに!もう、気をつけようがない!」と言いたくなるのも無理はありません。しかし、考えてみてください。こんな状態にしたのは、私たち人間の小賢しい(こざかしい)欲望なのです。

生態系と生命力をご覧下さい。私たち東洋人は、かつては自然と共存し、自然を壊さず、自然の恵みを受けて暮らしてきました。しかし、そこに欧米の考え方が入ってきて、日本人も洗脳されてしまい、「楽をしたい」「便利になりたい」「暑い・寒いはイヤだ」「うまいものを食べたい」などという欲望に支配された結果、とんでもないことをしでかしてきました。自然を破壊し、"科学的に検証して大丈夫"といった人間にとって都合の良い理屈(自然からみたら屁理屈)を引っさげて、ありとあらゆる欲望の限りをむさぼりつくした結果です(もちろん、私自身もその一員です)。

そして、とうとう、自然が言うことを聞いてくれなくなり、人間にしっぺ返しが来たわけです。二酸化炭素排出だけが温暖化の原因ではないかもしれませんが、自然を破壊し続けてきた事実は疑いようがありません。では、どうしたらよいのでしょうか?こんなときこそ、漢方や鍼灸が力を発揮します。養生であれば、1年を通して徹底的に正しい生活を送るしかないでしょう。秋・冬・春に正しい生活を心がけておけば、夏に内臓がいじめられても、比較的耐えられるだけの力を温存できます。夏だけ急に気をつけてみても遅いのです。私たちの身体は、それのみで1つの自然の生態系を有していますから、余計なことをしたり不摂生を積み重ねれば、自然を破壊することと同じ行為をすることになります。皆さんは、五臓六腑という社員を遣いこなす社長さんですから、社員をかわいがってあげて下さい。

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