気の上下 

〇「気が上がる、下がる」とは耳慣れない言葉だと思います。私はこの発想をたいへん大切だと考えています。「気が上がる」とは、人前であがった状態と同じで、意識が顔や胸などに集まり、ドキドキして落ち着かない状態です。呼吸は浅くなり、行動もセカセカして落ち着きがありません。神経もピリピリしているため、少しのことでも見逃すことができずに、他人とも衝突しがちな状態です。それに比較して「気が下がる」とは、意識がおヘソの下から足に降りた状態で、呼吸も深く、ゆったりと落ち着いています。精神状態も穏やかに保たれているため、他人にもやさしくできます。東洋の昔の人は、いかに「気が下がった」状態に持っていくかに腐心している様がうかがえます。

〇それでは、「気が上がった」状態では健康面でどのような変化があらわれるのでしょうか。気が上がると上実下虚の状態になるため、家でいえば土台、植物でいえば根が不安定になります。肉体面では重心が上に傾き、下腹から脚が空虚になるため、下半身がもろくなり、下腹にも力がなくなります。呼吸は浅く、空気が足りないような錯覚を覚えます。心臓の鼓動は速くなり、上半身に力が入り、肩もこります。それに比べて、下半身は力がみなぎらない状態で、足を使うのがだるかったり、腰が重かったりします。食べ物も心からおいしいと感じられず、食べ過ぎたり、逆に食欲がなくなります。胃がもたれたり、便秘になる場合もあります。精神面でも不安定な状態が続き、憂うつな時やイライラする日が多く、スッキリ晴れやかな気持ちになれません。他人の悪口が必要以上に気になったり、ささいなことでも怒りがちで、将来のことや人間関係で不安になることもあります。また、悪いことや小賢しい(こざかしい)ことを考えるのもこんなときです。当然、生理痛・子宮トラブルにもよくありません。

〇それに比べて、「気が下がった」状態ではどうなのでしょうか。上虚下実の状態になるため、家でいえば土台、植物でいえば根がしっかりと安定しているため、肉体面でも精神面でも重心が下がって落ち着きます。下腹から下半身に十分に力が入り、疲れにくくなります。呼吸は深く、赤ちゃんがおヘソで呼吸しているようであり、新鮮な空気を身体いっぱいで受け止めているような気持ちになります。長時間動いても苦にならず、腰や足がだるく感じません。食べ物は質素なものでもおいしく感じ、必要以上に食べ過ぎることがありません。精神面でも落ち着いており、他人の視線なども気になりません。将来のことでも必要以上に悲観的に考えることはなく、現実を受け入れる強さも持ち合わせることができます。他人をやっつけようとか、悪いことをしようなどという考えは浮かばず、子供のような純真な気持ちでいられ、絶好調な状態を維持できます。もちろん、生理痛・子宮トラブルにも良いでしょう。

〇気の上下は、生理痛・子宮トラブルなども含めた健康状態、人間関係、人生をも左右するものと考えています。東洋の昔の人は、気血をコントロールすることを徹底的に追求し、食養生、睡眠のあり方、運動法、気功、易経、導引、太極拳、呼吸法、漢方、あんま、鍼灸、精神の用い方などとしてまとめています。これらは大変すばらしいものですが、奥が深く、体得するのが容易でないものもあります。しかし、全てに共通するのは運動・睡眠・食事の3要素です。また、このような結論に至ってしまいましたが、どんな角度からみてもこの3つは欠かすことのできないものであり、相互に関係し合っています。

〇運動不足になるとお腹がすかないため、身体に良い質素なものをおいしく感じられません。そのため、お菓子や甘いものに偏り、胃がもたれます。胃がもたれると睡眠不足になり、また、運動不足も手伝ってぐっすり眠れません。睡眠不足の状態では運動する気力も起こらず・・・、といった悪循環の中に入ってしまいます。悪循環になれば気も上がるため、先に述べた状態に陥ることになります。気功など様々方法があると述べましたが、これらは運動・睡眠・食事を正しくすることが前提で成り立っており、それ単独では決してないのです。逆にいえば、運動・睡眠・食事を正しくすることで、特別のことを行わなくても、気を下げる方向に導くことができ、生理痛・子宮トラブルにも良く働くことは間違いありません。

〇昔の有名なお坊さんは「これらなしでは鍼灸医薬の効果も半減してしまう、養生すれば鍼灸医薬は必要ない。その上、領主が領民を思いやるように、自分の内臓を思いやれ。気を下げてこそ五臓六腑が十分に働き、持病も治る。」などという名言を残しています。みなさんも、優れた領主(政治家)のように、自分自身の領民(内臓)を思いやり、摂生して気を下げ、生理痛・子宮トラブル改善に一歩ずつ近づいて行こうではありませんか。最も自国民(自分の内臓)をいじめて苦しい思いをした私から、自分のことは棚に上げての提言です。

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