新興宗教と新興健康法

余計なことをして身体を壊すのはやめましょう

〇私は宗教を信仰していませんから、詳細は分かりませんが、邪道な新興宗教と新興健康法はよく似ているような気がします。これらは、よくできた理屈をこねまわして人々を惑わせています。〇〇ダイエット、〇 〇健康法など、健康法の教祖様になりたい人たちが、自分にとって都合の良い理屈をこね回したり、自社製品の売り上げを伸ばしたい組織が、著名人や専門家に監修料を払って宣伝しています。現代人は理屈で考える思考回路が出来上がっていますから、簡単にそれらに振り回されてしまいます(かつての私がそうであったように)。

〇伝統宗教は地味で面白みはありませんが、奇をてらうような真新しいことを言って宣伝したり、派手な布教活動は行っていないように思います。それに比較して、新興宗教は「あなたはこれさえやれば幸せになれる」から始まって「これをやらなければ不幸になる」などと言って、おおっぴらな布教活動を行っているような感じがします。新興宗教をやっている人に、理屈で対抗しても勝ち目はありません。彼らは理論武装をしているからです。しかし、感覚で考えれば、「どう考えてもおかしい」「胡散臭い(うさんくさい)」ことが多いのも事実です(全ての宗教が該当するとは申しておりません)。

〇同様に、本来の伝統的健康法は、普通に考えて当たり前のことを当たり前に主張しますから、少しも面白みがありません。地味で苦しい面もあります。これに対して邪道な新興健康法は、派手なことをうたって宣伝します。「楽で誰でもできて手軽」を売り物にします。理屈で考えればそうかもしれませんが、感覚で考えれば、おかしなものも多くあります。そして、最も困るのは「余計なことをやらせる」ということです。余計なことをやらずにいれば、健康で過ごせたのに、余計なことをやったばかりに不健康になる人も、普通に存在しています。こういった人たちに健康志向の強い人が多いのも皮肉です。健康について無頓着な人の方が助かる場合も多々あります。

〇新興健康法の例を挙げてみると、@「甘いものは即効性のエネルギーだから、疲れているときは食べたほうが良い」A「お酒は百薬の長だから、たまには飲んだほうが良い」B「朝は無理にでも食べたほうが良い」C「水は沢山飲んだほうが良い」(ただし、夏は先んじて飲まなければなりせん)D「酸っぱいものは身体に良いから1日1杯のお酢を飲んだほうが良い」E「こんな味付けをすると、食べたくないときでも食べられるから身体に良い」・・・など、いくらでもあります。これらの間違いに、一つひとつ注釈を加えていたら切がありませんが、ここで挙げたものだけでも間違いを指摘してみましょう。

@「甘いものは即効性のエネルギーだから、疲れているときは食べたほうが良い」→砂糖T 砂糖U 砂糖V 砂糖Wをご覧下さい。

A「お酒は百薬の長だから、たまには飲んだほうが良い」→酒飲みに都合の良い理屈です。このことわざは「お酒に強い人が、たま〜に飲めば身体に良いこともある」というのが正しい解釈です。それをお酒好きな人が、自分たちに都合の良い理屈にしているだけです。中には、お酒に弱い人が「身体に良い」という間違った解釈の下に、無理に飲んでいる例もあります。お酒に弱い人にとっては、付き合い程度に飲むだけでも身体が悲鳴をあげます。もっと酷い例になると、「鍛えれば強くなる」などと、呑ん平(のんべい)にとって都合の良い理屈を振り回す人もいますが、身体を破壊する行為です。もし、少量のお酒を飲みたいのなら、養命酒を規定の量だけ飲んでみたらいかがでしょうか。

B「朝は無理にでも食べたほうが良い」→食事をご覧下さい。胃腸という社員が「こんなに働かされて、なおかつ、いじめられて、もう働きたくないよ」と、過労でうつ状態になっているところに、無理に仕事をさせれば、胃腸という社員のうつが悪化することは普通に考えても分かります。何百年も前の昔の人はすでにこう言っています。「腹がすいてから食べ、腹がいっぱいになる前にやめる」。

C「水は沢山飲んだほうが良い」→冬季の正しい水分摂取をご覧下さい。冷え性の方だけでなく、舌が薄白色でポチャッと腫れぼったくて、なおかつ歯の跡がついている人も同じです。舌がなぜ腫れぼったいかというと、「身体の中に余分な水分がたまっているのでこれ以上、水分を無理に入れるな」という信号を発しているのです。舌だけでなく、身体のありとあらゆる所に不必要な水分がたまっており、悲鳴をあげているのです。つまり、必要な分は摂取した方が良いに決まっていますが、必要以上に押し込んだら良いはずがありません。(ただし、いうまでもなく夏は先んじて余分に飲まなければなりせん。また、陰虚体質の人も多めに摂る必要があります。それが適度に摂るということです)

D「酸っぱいものは身体に良いから1日1杯のお酢を飲んだほうが良い」→五行色体表をご覧下さい。イライラタイプの五味に「酸」とあります。つまり、肝にとって、酸っぱいものを適度に摂取すれば身体に良いし、余計に摂り過ぎれば逆効果と言う意味です。このことは2000年以上前の古典にすでに書いてあります。昔の人は、良く分かっていたわけです。難しく考えなくても、「適度が最も良い」ということはお分かりになると思います。おにぎりに梅干を入れるのはそういう意味です。ちなみに、吐き気タイプ・五味の「甘」は、甘味類の甘さではなく、炭水化物の甘さのことです。

E「こんな味付けをすると、食べたくないときでも食べられるから身体に良い」→食べたくないときに無理に押し込めばBと同様になってしまいます。調子が悪いときに食べたくないのは、エネルギーを自然治癒に回そうとしているからです。無理に食べれば、限られたエネルギーを消化に回さなければならず、自然治癒に回らなくなります。調子を壊している動物に食べ物を与えても、そっぽを向くのはそのためです。動物は本能で分かっていますから、我々が頭で考えて犯すような過ちは犯しません。このことについても、江戸時代の健康法の大家は声高に主張していました。

@〜Eのどれをみても、余計なことを行った結果、身体に悪影響を及ぼしています。健康志向の強い人ほど陥りやすい過ちです。このような生活を数ヶ月、あるいは数年(個人差があります)繰り返しても、すぐには悪影響を及ぼすとは限りません。しかし、それが5年〜何十年も続けば、たいへんなことになります。そのことが原因で、器質的な症状に陥る人も珍しくありませんが、日常生活の過ちが原因であることに気づかずに、過ちを繰り返し続けている人が多いのも事実です。

〇もっと困るのは、知り合いに勧められることです。「私はこんなに健康になったから、貴方もどうぞ」と言われるわけです。知り合いの言うことで、なおかつ当該健康法と利害関係がなければ、素直な人は信じてしまいます。なぜ、こんなことが起こるかというと、「人は皆同じ」という西洋科学的発想が、日本の現代社会を支配してしまっているからです。これは、戦争に勝つためには、「脈をみて、舌をみて、ツボをみてその人の体質を決めて、人によって処方を変える」とした従来の東洋医学では、軍人が不調に陥ったときには面倒だったそうです。西洋科学的な発想で、「人をバタバタと並べておいて、機械的に順番にやっていけば良くなる」といった処方の方が、手っ取り早く戦いに復帰できるため、軍部にとって有利であったようです。そのため、一時期日本軍は勝ち名乗りを上げましたが、東洋医学は衰退していきました。中国にしろ、韓国にしろ、あの北朝鮮でさえも、西洋医者ばかりでなく、半分は東洋医者が存在しているのです。つまり、東洋医学を医療として国が位置づけているわけです。東洋医学を医療として位置づけていないのは、東洋列国の中でも日本だけです(台湾もかつて日本の統治下にあったため、日本の影響を色濃く受けている)。日本が東洋医学を医療として位置づけていれば、「人は皆同じ」などという機械的な発想が支配することはなかったでしょうし、間違った健康法も、これほどまでに蔓延(はびこ)らなくて済んだのではないでしょうか。

〇便秘気味な人に対して、便が緩くなるように促すことは当然です。しかし、下痢気味の人に同様の処置を施したら、それは「余計なこと」になってしまいます。つまり、人それぞれによって、処方を変えなければならないのは、健康法も同じなのです。前述の例を挙げて説明してみましょう。
@1日中肉体労働をしている人が、労働の合間に少量の甘いものを食べるのは悪いことではありません。しかし、頭脳労働をしている人が、甘いものを食べていたら、良いはずがありません。これも余計なことをしているわけです。
Aお酒が強い人が少量のアルコールを飲めば、「百薬の長」になることもあるでしょう。しかし、アルコールを解毒できない人は、たとえ少量のアルコールでも害になることは当然です。
B朝、無理に食べても胃腸が丈夫な人は「今日は朝ごはんを食べたから好調だ」となるでしょうが、胃腸が弱い人が無理に詰め込む毎日を過ごしていたら、胃腸虚弱は一層ひどくなるでしょう。
C舌が絞まって真っ赤な人(陰虚体質)は、ノドが普通の人より渇きますから、余計に水を飲む結果になるでしょうし、それは悪いことではありません。むしろ、必要なことでしょう。逆に、舌がポチャッと腫れていて、薄白色で、なおかつ歯の跡がついている人(陽虚体質や痰湿中阻など)は、ノドはあまり渇かないでしょう。なぜならば、身体が「これ以上、水分を入れられると許容量を超えてしまう。内臓に負担をかけないように、少ない量でやりくりするから、もう入れるな」と言っているわけです。それにも関わらず、前者の真似をして、無理に水分を詰め込む生活を年単位で繰り返せば、器質的な症状に陥ることもあるでしょう。(ただし、いうまでもなく夏は先んじて余分に飲まなければなりせんそれが適度に摂るということです)
D酸っぱいものを食べたい人が、適度に食べれば肝や筋を養えますが、無理に詰め込めば肝や筋に良くありません。これらは、全て余計なことをしてしまっているのです。

〇「私たちは素人だから分からない」と言われる方もいますが、普通のことを普通に考えれば判断できると思います。例を挙げてみます。@甘いもの→どう考えても不自然な食事だ。良いわけがない。Aお酒は百薬の長→普通の食事をしていれば、無理にアルコールを流し込む必要があるわけない。B朝は無理にでも→食べたくないのに無理に食べるのが、胃腸によいはずがない。C水は沢山飲んだほうが良い→飲みたくないのに無理に飲んで良いはずがない。昔から「飲みすぎ食べすぎ」はよくないと言うではないか。 D酸っぱいもの→ある特定の味だけ、味わいたくもないのに無理に流し込むのが良いはずがないE味付けによって、食べたくないときでも食べられる→食べたくないのに、無理に食べるのが胃腸に良いはずがない。

〇最も大切なことは、「理屈ではなく感覚で考える」ことです。宗教にしてもそうだと思います。理屈はそうだけど、どう考えても胡散臭い(うさんくさい)と思うことも多いでしょう。健康法も同様です。「どう考えても異常」とすぐに分かることでも、理屈をもって説明されると納得してしまいします。そこに、専門家の推薦があれば、なおさらです(この人たちは監修料をもらっています)。どんな著名な人が推薦しても、邪道新興宗教には入らないのと同様に、どんな社会的地位のある人が推薦しても、おかしなことはおかしなことなのです。

〇邪道新興健康法も、東洋医学をうたっていることも多いので、注意が必要です。それは、邪道新興宗教が伝統宗教をうたっているのに似ています。かつて、事件を起こした邪道新興宗教も、仏教をうたっていたわけです。

〇以前、知り合いで東洋医学を標榜する健康食品の販売を行っている人がいました。その人は、東洋医学のバイブルである「黄帝内経」「傷寒論」などは読んだこともありませんでした。まさにキリスト教徒でありながら、聖書を読んだことがないのと同じです。しかし、販売では"東洋医学"と称して客(健康志向の強い人)の心を掴み、売り上げを伸ばしていました。巷(ちまた)では"宗教といえば新興宗教"とでもいうかのように、古(いにしえ)から続いている伝統宗教は影を潜めているように思います。同様に、2000年以上も前に、こうした身体内部のことが分かる聖人たちが、何万人もの患者の治療を土台に、たいへんな苦労をして築き上げた本来の東洋医学(「黄帝内経」「傷寒論」など)は影を潜め、商売第一の上辺(うわべ)だけの東洋医学に凌駕(りょうが)されつつあります。そして、誰もが簡単に、軽はずみに東洋医学を商売の道具にするようになりました。

〇こうしたことは、単なる"はり・きゅう屋"の私が言っても信じてもらえないことも多いものです。そんな皆さんは、本来の東洋医学を実践している医者や漢方薬局へ行って聞いてみるとよろしいのではないでしょうか(脈・舌・腹診をしっかりやって、証を決めて処方している所:あまり多くありませんが・・・)。例えば、真武湯証(しんぶとうしょう)などの本当の冷え性や、舌が薄白色でポチャッと腫れぼったくて、なおかつ歯の跡がついている人などは、水分を控えた方が良いのは常識です(ご本人に冷えの自覚があっても、少陽病などは冷えには入りません。参考:冷えの分類)。

〇私はかつて、虚弱であったが故に、数々の健康法に手を出して失敗しています。余計なことを繰り返してどんどん虚弱になっていってしまいました。あることをしたために、数ヶ月間、毎日下痢したこともあります。それは科学的には説明できないそうですが、やめたとたんに下痢が止まりました。丈夫な人がそのような行為を行っても、たいへんなことにはなりませんが、体質的弱点を抱えた人(実証タイプや虚弱タイプ)が同じ事を行うと、科学では説明できないことが起きることも珍しくありません(しかし、東洋医学では普通に説明できます)。失敗を繰り返して来た私ですから、偉そうなことはいえませんが、余計なことをして身体を壊している人があまりにも多く、見て見ぬ振りはできないので、しつこく書いてみました。賢い皆さんは、ぜひ、常識的なご判断を下され、健康に留意されることを願ってやみません。

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