現代科学的なアプローチ
(便秘の定義)
大便が長時間にわたって大腸の中から動かず、大便の水分割合が少なくなって硬さを増し、排出する際に困難な場合を便秘といいます。便秘の定義には2つの要素が存在します。一つ目は頻度です。明確な定義はありませんが、3日以上にわたって排便がない場合は便秘と称することが多いです。
2つ目は当人の感じ方です。排便がなかなか出なかったり、大便が残って出ないような感覚がある場合は、頻度が低くなくても便秘と称することがあります。
要約すると、1~3日に1回以上のお通じがあり、その際になかなか便が出なかったり、残便感がないのであれば正常で、それ以外は便秘と定義してよいでしょう。
(便秘を問題視する理由)
排便時の苦しみはご承知のとおりです。それ以外では、病気の原因となり得る便秘です。現代の西欧化した食生活と運動不足の環境下では、便秘に苦しむ人も多いといわれています。便秘により大腸が不活性になると、大腸の病気が増える
との見方があります。
また、大腸の病気になったことから来る便秘もあります。腸閉塞や癌(がん)などによる様々な症状の1つとして、便秘が起こることがあります。そうしたことから考えると、快便は健康度を図る上で大切なことといってよいでしょう。
(分類)
機能性と器質性があります。
1機能性便秘
器質的な原因が見当たらないにも関わらず、便秘が続く場合をいいます。
原因によって機能性便秘を分類すると(ア)~(ウ)になります。
(ア)弛緩性便秘:最も多くみられます。腸管全体に力がなく”だら~ん”と緩んでしまい、キュ~ッと締まらないため、腸内容物を送ることができません。
(イ)けいれん性便秘:腸管が過緊張し、腸の内容物をスムーズに送れない状態です。兎糞様の便が少量出ますが、大腸内に残っている感覚があります。よくあるタイプとしては、過敏性腸症候群(交替制)に伴うものがこれにあたります。
(ウ)直腸性便秘:腸の壁の排便反射に異常があり、大便が直腸に来ても排便反射が起こらずにとどまるものです。別名、習慣性便秘のことであり、排便を我慢しているときなどにも起こります。
機能性便秘は、重篤な病気に発展することはありません。しかし、アルコール・カフェイン・自分自身にとって苦手な食べ物・運動不足・環境因子などを改善することにより、便秘も寛解することがあります。
2器質性便秘
腸に器質的な原因があって、そのために物理的に起こる場合をいいます。大腸癌などでも便秘になる可能性があるため、要注意です。急に便秘になる、便秘に血が混ざる、便が細くなるなどの場合には、医師の診察を受けましょう。
(鍼灸の適応)
機能性便秘や精神的ストレスによるものが対象となります。
(鍼灸施術の方針)
腸を整え、排便反射を促します。整腸を目的として、おへその横や胃袋のあたり、腰や背中の筋肉の緊張しているツボや、押して痛いなどの反応があるツボに施術します。
(ツボの例)
天枢(てんすう):おへその数センチ横にあります
中かん(ちゅうかん):胃袋の辺りにあります
上かん(じょうかん):中かんの数センチ上にあります
下かん(げかん):中かんの数センチ下にあります
大腸兪(だいちょうゆ):腰の辺りにあります
古典的なアプローチ
生命力の強い人が便秘になると、極めて不快な症状としてあらわれます。これを実証といいます。大腸にこもった余分な熱を捌く、腸管の水分を補う、などの方法により改善を図ります(鍼の適応)。
いきんでもなかなか出ない、やっと出したらひどく疲れた…などの症状がある場合は虚証といいます。腸の生命力が低下していることが原因と考えられるため、腸の力を補います(鍼または灸の適応)。
なお、虚証の場合、普通の硬さか又は軟便にも関わらず、肛門に便が残ってスッキリしない場合があります。この場合も腸の力が弱っていることが原因です。やはり、腸の生命力を補うことが必要です。
(鍼灸)
鍼灸施術を受ける人の場合、虚証の便秘の方が多くみられます。肺・脾・腎を中心に生命力の活性化を図るため、鍼または灸にて施術します。
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