鍼灸はなぜ効果を期待できるのか

鍼灸は診断や施術で手を用いることから、手技療法の中に区分されます。

病の原因を突き止め、それを根絶することを目的とする西洋医学に対して、手技療法は病という異物に対してアプローチするのではなく、精神と肉体がひとまとまりになった人を対象とすることから、施術者と患者という関係に重きを置きます。

手技療法は診断と施術を手で触ることによって成り立つため、自ずと良好な施術者−患者の関係が築かれ、その関係が病的状態を改善する大切な要素になることを人類の長い歴史の中で把握し、独特な施術体形を築いてきました。

西洋医学と鍼灸医学の大きな相違点は、治療・施術の手段にあるといえます。西洋医学では、投薬や手術などの大きな力で治療しますが、鍼灸は細い鍼、米粒大の艾(もぐさ)という微細な力を用いて行う施術法だけに、その効果の科学的解明は難しいともいわれています。

しかし、鍼灸が有する調気(ちょうき=気を整える)、調神(ちょうしん=神を整える)の働きに焦点を定めたデータをみると、鍼灸の効果を認識できます。

調気の気は、東洋医学の大切な要素です。その気を西洋医学の視点で捉えると、自律神経の働き、ホルモンの働き、免疫の働きを総合したものといって良いでしょう。

自律神経は生命神経ともいわれ、私たちの意思とは無関係に内臓の働きを調整しています。自律神経は交感神経と副交感神経に区分され、それぞれが相反する機能を担っており、内臓を主(つかさど)っています。これらが何かをキッカケに片方の働きが崩れると、双方のバランスを欠くことになります。

自律神経の作用を確認する方法の一つに、身体微細振動という検査法があります。鍼灸施術の前と後に身体微細振動を計測すると、鍼灸は交感神経の過度な緊張を抑え、自律神経を整える働きがあります。

ホルモンは各々の内分泌腺で造られ、血液の中に分泌されて体中に行き渡り、様々な器官に働きかけて色々な作用を発揮する物質です。ホルモンは何十種類もあり、その働きはいろいろです。

ホルモンを生み出す臓器の第一の根源は下垂体で、第二の根源の副腎と一緒になって、他の内分泌腺をコントロールしています。

副腎に関係が深いツボ(腎兪=じんゆ)に施術すると、副腎皮質刺激ホルモンの分泌が活性化して、コルチゾール(抗ストレスホルモン)の分泌も活性化することが分かっています。もし、内分泌腺のうちの一つの機能が低下して、内分泌腺同士のバランスが乱れた時には、鍼灸施術によって下垂体と副腎皮質系などを整える効果を期待できます。

免疫は体内に侵入した異物(抗原)に対して抗体をつくり、有害な作用を消失させてしまう働きです。免疫反応を主に担うのはリンパ球で、その働きに応じてT細胞とB細胞があり、T細胞は更にヘルパーT細胞(B細胞の働きを促す)とサプレッサーT細胞に(B細胞の働きを抑える)区分されます。

鍼灸施術はB細胞とヘルパーT細胞を増加させ、サプレッサーT細胞を減らすことが分かっています。これらの研究成果から、ツボに対する鍼灸施術は免疫機能を活性化し、様々な病的状態に効果を期待でき、自然治癒力を活性化することが期待できます。

また、調神作用でいうところの神は、脳の働きをあらわします。脳波トポグラムとPET(ポジトロンCT)で、鍼灸施術が脳の機能を調整する作用があるか否かを研究した報告があります。

脳波は大脳皮質の精神活動を主(つかさど)るものです。鍼灸施術を行うことにより、安静にしている時のアルファ波が増え、ウツラウツラした状態のシータ波の状態まで活性化することが判明しています。

PET(ポジトロンCT)は意識のある状態で脳を輪切りにして、脳の活動の状態をみる検査方法です。鍼灸施術により、間脳を中心に脳の神経細胞を一時的に活性化する効果が確認されています。

脳波トポグラムとPET(ポジトロンCT)の研究を通じて、鍼灸施術が高度な精神作用をつかさどる新皮質と、本能的な作用をつかさどる古皮質との調和を改善して、生命現象の根源といわれる脳幹の働きを調整し、自然治癒力を活性化する作用が認められています。つまり、調気、調神の作用が現実に起きていることが証明できたのです。

参考:_pdf (jst.go.jp)

ページの最初に戻る

トップページへ
Copyright(C)2005-2021  Nagashima Acupuncture Moxibustion Room(Tsutomu Nagashima)長嶋鍼灸室