月経・妊娠・閉経のメカニズム

西洋医学と東洋医学では、まったく異なる理論で成り立っています。世の中に出回っている理論は、すべて西洋医学的理論か又は、それを土台にした健康法的理論といえます。ここではそれらの理論的説明を廃し、東洋医学的な理論で説明しています。分かりにくい点も多々ありますが、ご容赦ください。

〇月経のメカニズム
肝の力でポンプからエネルギーがくみ上げられる→水道の蛇口(開閉は脾≒胃腸の作用)から出るエネルギーが、浴槽(体内)にたまる→浴槽の容量がいっぱいになる→栓(腎気の作用)がゆるみ、月経が起こる。この行程が月経周期です。妊娠した場合には、充満したエネルギーは胎児を守ることへ向けられるため、月経血などのように体外に漏出させないように、栓(せん)が強く閉まるため、月経が止まります。



〇月経周期のグラフ

ポンプからくみ上げられるエネルギーはグラフ(太線)にもあるとおり、排卵の頃と月経前に亢進します。理由は、受精→着床→妊娠といった過程で多くのエネルギーを必要とするからです。この時、エネルギーの流れがスムーズにいかないと、それが肉体・精神両面を侵し月経前にイライラしたり、鬱っぽくなったりします。

人によっては相剋(そうこく)現象により、脾(≒胃)を攻撃するため、胃の不調なども強くあらわれます。生理前に胸が張るのも同様の理屈です。生理前は肝(ポンプのくみ上げ作用)が強く働きますが、その結果、足の厥陰肝経というエネルギーのルートに作用して、ルートの途中にある胸に影響が及ぶのです。産後の乳汁分泌などにも関与している理由はそこにあります。7五志にあるとおり、肝は怒を主(つかさど)ります。そのため、この時期に外側に発散するような症状が出れば、イライラしたり怒りやすかったりしますし、生命力が弱くなりがちな症状が出れば疲労倦怠感が強くなります。月経が来てしまえば、エンジンがフル稼働をやめますから、スッキリします。


〇排卵前後の帯下や出血など
排卵日の前後には、浴槽に多くのエネルギーがたまりますが、同時に栓も強く閉めておき(腎の固摂)、エネルギーを体外に漏出しないようにコントロールしています。この時期には、栓(腎気の作用)にかかる負担が増えるため、栓が少しだけ緩みますので、エネルギーがほんの少し排出されます。それが帯下です。栓を閉めておく作用(腎の固摂)が弱いと、不必要な出血が起こります。

〇月経がダラダラと続く
ダラダラと続くのは、必要なときに蛇口を開けて、不必要なときに閉める(脾≒胃腸)機能が弱いわけです。これを脾の統血機能と呼びます。しかし、根っこにあるのは、栓を閉めておく作用(腎の固摂)です。栓が弱いと、緩(ゆる)みやすくなりますから、ダラダラと出てきてなかなか止まりません。

〇閉経について
「月経が起こる」ということは、良くいえば”活性化している”ですが、悪くいえば”異常亢進させて無理に力を出している”となります。若い頃は放っておいても活性化しています。少し年齢を重ねていくと、無理して活性化させます。そして、もっと年齢が上になると、”これ以上無理に活性化させると生命状態に悪影響を及ぼすから、この辺でやめておこう”という生命維持装置が働いて月経を止めます。これが閉経です。閉経といっても、まだまだ、人生は道半ばです。閉経してからの人生を、いかに健康に活き活きと生活していくか・・・それが大きなテーマですね。

〇月経トラブルや更年期が発症する理由や改善策について
肝虚体質
(生理痛)
この体質の方は、ポンプからくみ上げられるエネルギーの量が、急激に亢進する傾向にあります。また、不摂生をしやすい傾向にあるため、飲食不摂や運動不足、遅寝、ストレスなどで、エネルギーの流れが悪くなると気や血が滞ります。気も血も滞って流れにくいわけですから、月経が起きても浴槽からスムーズに排出されずに詰まりが発生し、生理痛が起こります。

これが日常化すると、浴槽に塊(かたまり)が付着して不要物となり、長期間体内にこびりつき(血瘀=けつお)、生理痛を悪化させます。出産後に生理痛が軽減するのはこのタイプで、胎児とともに不要物(血瘀)も一緒に排出されるからです。逆にアマリモノ的な要素はなく、虚弱な状態で成り立っている人の場合、胎児といっしょに母体のエネルギーの一部が漏出してしまうために虚弱傾向が悪化し、体調不良を訴えるようになります。アマリモノが邪魔しているタイプには瀉法(不必要なモノを排出する)の施術を行い、虚弱タイプには補法(必要なエネルギーを補う)の施術を行うのが東洋医学のセオリーです。

(生理不順)
気・血の流れが悪い人は、スムーズに浴槽にエネルギーがたまりません。その結果、周期が長くなります。それに不必要な熱が絡んでくると、身体全体が異常亢進するため(のぼせ・ほてり)、エネルギーの流れが急激になり、周期が短くなります。

(月経前症候群)
気や血の流れが悪いと詰まるため、精神情緒の不安定が起こります。そこに脾(≒胃腸)の虚弱が加わると、相剋(そうこく)現象が発生し、胃の不快感となってあらわれます。つまり、浴槽にエネルギーがスムーズに流れないため、イライラやヒステリーとなるわけです。月経を迎えると、余分なものが出て行きますのでスッキリします。

(不妊)
気血(エネルギー)の通りが悪い体質であり、卵管を含め身体中の気血の通りの悪さが妊娠に悪影響を与える場合があります。また、下図のように脾(≒胃腸)を剋すると、消化吸収→エネルギーを生産→生殖器を養う・・・の機能が減退するため、妊娠しにくくなります。肉の多食や運動不足、遅寝は通りの悪さをさらに増長しますので注意が必要です。鍼(瀉法=詰まりを改善する)でエネルギーの通りの悪さを改善し、気血の流れを活発にすることにより、生殖能力が活性化されれば、妊娠・出産できる可能性は高まります。

 

脾虚体質
(生理痛)
この体質の方は、他の全ての体質と密接に関わってきます。肝の作用により、ポンプから急に沢山のエネルギーをくみ上げ、浴槽に排出しようとすると、蛇口(脾)に負担がかかります。そのため、脾(≒胃)がいじめられ、胃腸の問題や吐き気に結びつくケースが多くみられます。これは、相剋現象(上図)としても説明できます。

(生理不順)
元となるエネルギーの大部分は、飲食物から脾(≒胃腸)の消化吸収機能によって生産されます。脾虚体質ですから、消化吸収する機能が低下しているため、エネルギーが生産されにくい傾向にあります。その結果、浴槽がいっぱいになるまでに時間を必要とし、月経周期が長くなります。また、消化吸収機能の低下により、密度の少ないエネルギーばかりが浴槽にたまってしまうと、早く浴槽がいっぱいになるため、周期が短くなる人もいます。この体質の場合、蛇口の開閉を主(つかさ)どる機能も弱いため、月経血のコントロールがうまくいかず不正出血する例が見受けられます。

(不妊)
消化吸収→エネルギーを生産→生殖器を養う・・・の機能が減退するため、妊娠しにくくなります。いわゆる気虚(エネルギー不足)の状態です。妊娠に直接影響を与えるのは泌尿生殖器を担当する腎ですが、それにエネルギーを絶えず補充する役目が脾(≒胃腸)の消化吸収能力です。”腹八分に病なし”とは脾(≒胃腸)の重要性をあらわした言葉です。胃腸の消化吸収能力を活性化することにより、生殖能力も活性化されて妊娠できる可能性は充分にあります。

陽虚体質
(生理痛)
”冷え”によりエネルギーの流れが悪くなり、月経が起きても浴槽からエネルギーがスムーズに排出されずに詰まりが発生し(血瘀=けつお)、生理痛が起こります。これが日常化すると、浴槽に塊(かたまり)が付着し、”アマリモノ”となり、長期間体内にこびりつき、生理痛を悪化させます。この点は、肝虚体質と似ています。違いは、冷えにより滞ることです。

(生理不順)
ポンプでくみ上げられるエネルギーについて、冷えで流れが悪くなっている人は、なかなか浴槽にエネルギーがたまりません。その結果、周期が長くなります。栓でエネルギーを止めておく機能が弱い(栓がゆるい)場合は、エネルギーがたまる前に月経として体外に排出されてしまうため、周期が短くなります。栓がゆるみ過ぎれば、エネルギーの不必要な漏出が起こるわけですから、早く栓を強化しなければなりません。そのためには、お灸が最善の方法です。

(無月経)
この体質の方は、冷えて気血がかたまることにより、生殖能力をフルに発揮できず(エネルギーが生産されずに)月経が止まってしまう方もいます。その場合、お灸をフル活用して、冷えてかたまった気血を本来あるべき状態に導き、活力ある排卵・月経を実現できる可能性はあります。

(不妊)
冷えて気血がかたまることにより、生殖能力をフルに発揮できず(エネルギーが生産されずに)不妊になる場合があります。その場合、お灸を使って冷えを追い出すことにより、気血の力を活性化できれば、本来の生殖能力が開花する可能性は充分にあります。

〇自分でできる養生法
(肝虚体質)
肝(ポンプからくみ上げる力)が排卵日以降、気や血の流れをコントロールできないために、イライラ・ヒステリー・胃の不調(相剋現象)などが起こります。このエネルギーを発散するためには、足を使う運動が最も手っ取り早いといえます。つまり、運動すれば滞りが解消され、スッキリする方向にいくわけです。また、気や血の滞りを解消するためには、欧米型一辺倒の食事を見直す必要がありますし、早寝して情緒を健全に保つ必要もあるでしょう。

(脾虚体質)
脾については、単独で病むことは比較的少ないと思われます。元々胃腸の虚弱はあるにしても、他の体質と密接に関わってきます。そうはいっても、やはり胃腸の状態を健全に保っておけば、被害も最小限にくい止めることが可能です。古人曰く「腹が減ってから食べ、いっぱいになる前にやめ、足を使う運動をして、早く寝る」とのことです。

(陽虚体質)
東洋医学的には腎陽虚(じんようきょ)といいます。腎については「栓」という目立たない存在として取り上げましたが、非常に重要な役割を担っています。まさに陰中の陰、縁の下の力持ち的存在が(東洋医学的な)腎の位置づけです。月経や生殖機能は、これなしには語れません。足を使って生命力を強化し、少なめに食べて体に対する負担を軽くして、メンテナンスに必要な時間帯22時~5時に長く熟睡する、ということが大切といえましょう。また、漢方薬や灸で温補して、生命力を高めることも改善に貢献するでしょう。

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